Fahrenheit Ⅳ


「先日のメール、返事を返せなくてごめんなさい」と頭を下げられ俺は戸惑った。


まさか謝られるとは……


正直、メッセージが帰ってこなかったのはショックだったが、今瑠華を責める資格もない。


でもこの後『もう二度とあのようなメッセージ送ってこないでください』って言われるかも。


俺は話題を変える為


「そう言えばさー、前にもあったんだよね、家の近くのスーパーで、その子もユーリって名前で足元に抱き着かれて。俺って父親に向いてるのかな」とわざと明るく言うと


「子供の目線で抱き着きやすい場所にあったのでは?」と瑠華は冷たい。


ひゅぅう~


適度の温度なのに店内に木枯らしが吹いた気がしたのは気のせい?


「July, this man is Mom's boss.
(ユーリ、このお兄さんはママの上司なの)」


「I'm sorry I mistook you for Dad.
(パパと間違えちゃってごめんなさい)」ユーリはまたも謝ってきた。


「Who's cooler, Dad or him?
(パパとどっちがかっこいい?)」と瑠華が微笑みながらユーリを見る。そんな顔で―――ユーリを見つめるんだな。それは慈愛に満ちていて、聖母マリアを思わせた。優しさに包まれていて温かい。


「Dad!(パパ)」とすぐ答えが帰ってきて、ガーン…


くすくす……瑠華は口元を押さえて笑っている。久しぶりに見た。瑠華の笑顔。それは俺に向けられたものじゃないかもしれないけれど、やっぱり瑠華には笑っていてほしい。


するとユーリはちょっと身を乗り出し、俺の耳にこそっと耳打ち。


「No way. You're way cooler.
(嘘。おにーさんの方がかっこいいよ)」とこそっと言いちょっとはにかむ。


か、可愛い!!!!


ああ、俺が変態野郎になりそうだ。


そう考えたらこんな可愛い子供を手放した瑠華の気持ちが痛い程胸に刺ささる。


「あの……実は相談事が…」と瑠華が切り出した。


「うん、そう言ってたよね。どうしたの?」相談事と言うのはユーリと一緒に居ることが関係しているのだろうか。まさかマックスがユーリを諦めて瑠華に戻す、とか?


しかし答えが意外なものだった。


「バレンタインデーまでマックスが一時帰国するようですが、その間ユーリを預かって欲しい、と」


「え?何で?」


「さぁ、気まぐれかもしれませんが、ユーリを利用してまた再婚を狙っている可能性もありますね」


再婚―――!!?あいつ、まだ諦めてないんかよ!


んなことぜってぇ許せねぇ!!