Fahrenheit Ⅳ


今まで写真を見たことはある。けれどホンモノは初めてだ。写真より少しだけ成長したのか、その姿は美少女そのもの。変態野郎にすぐに目をつけられそうなほど可愛い。誘拐とかが心配だ。


ユーリは俺がパパじゃないことに気づいたのか慌てて離れると


「I'm so sorry.(ごめんなさい)」と小さく謝ってきた。


「It's OK, I'm not mad.(いいよ、怒ってないからね)」ユーリの視線に合わせるようしゃがみ込むとユーリはちょっとはにかんだように笑った。


「啓、すみません。こんな場所まで呼び出してしまいまして」と瑠華が頭を下げる。


「ううん、君がここを指定した理由が分かったよ。誰かに見られたら困るしね」


瑠華はちょっとほっとしたように吐息を吐いた。


それからユーリの手を握り、「席にご案内します」と言って歩いて行った。


店内は休日とあってか混みあっていた。


休日だからか?それともユーリを連れているから、今日の瑠華は少しカジュアルに思えた。上品なボルドー色のV開きモヘアニットは背中にボタンがあしらってあって、スキニージーンズにいやらしくない程度のヒョウ柄パンプス。


瑠華に案内された席にはすでにドリンクバーのグラスが二つと、ポテトフライ、フライドチキンっぽいものが乗っていた。瑠華が絶対にチョイスしなさそうな料理はきっとユーリの為だろう。


「啓は何になさいます?ドリンクバーはもう頼んであるので」と瑠華が席を立とうとして


「いや、自分で注いでくるから大丈夫」と俺はそれを手で制した。


ホットコーヒーを注ぎながらこれから何を言われるんだろう、とありとあらゆる想像をしていた。それも殆どが悪い方向だ。基本ポジティブなのに瑠華のことになると気弱になる。


コーヒーを持ちながらテーブルに戻ると


「食事はしてきましたか?食べてこられなかったのなら何か」と瑠華はタブレット端末を操ろうとする。


「いや、大丈夫」と俺はまたも手で制した。


正直、今朝から何も食ってないから空腹だったが、こんな状態で食事をしても喉に通らない気がした。


ユーリは日本語が分からないのか俺たちの会話を目でいったきたりさせながら耳を立てているようだった。