「あー、ざっくりいっちゃってますね。でもこの程度ならちょっと縫って抗生剤を飲めば二週間程で完治しますよ」
と若い獣医が子猫を診て、麻酔の準備をしている。
お前、大丈夫か……こんな小さな体で耐えられるか…とハラハラした面持ちで診療台に乗せられた子猫を眺めていると、子猫は寒いのか震えながら、しかし注射で麻酔を打たれても暴れることなく大人しくしていた。その表情はぐったりと生気が感じられない。
「生後一か月ってとこかな。どこかの野良猫が母猫とはぐれた可能性がありますね」と怪我の部分を縫いながら獣医が言う。
やっぱ野良猫だったか。
縫合が終わると若い女の看護師がぬれタオルで子猫の体を丁寧にふくと、さっきはごわごわしていて泥だらけだった毛並みがいくらか復活したのかふわふわしてきた。
「もう大丈夫ですよ。二日に一回消毒に来てもらって、冷たすぎないミルクをあげたら一週間で抜糸できますよ」と看護師が説明をくれたが
「あの、俺仕事が忙しくて二日に一回消毒にこれるかどうか」
「では消毒液を出しておきますので、飼い主さんがやってあげてください」とにこにこ言われた。
俺、飼い主?いつの間に??
でも放っておけない。
結局獣医と看護師に言われた通り、消毒液とミルクに混ぜる感染予防の抗生剤をもらって、ついでに猫用のトイレ用シート、小さなゲージを買って俺はその小さな猫を抱えて帰ることになった。
家に帰って改めて気づいた。猫は警戒心が強い、と言うが随分大人しい。しかしかなり痩せている気がした。
きっと怪我をして何日も何も口にできなかったに違いない。
俺は牛乳を少しだけレンジでチンすると皿に入れて子猫の前に差し出すと、最初は少し警戒していたものの腹が空いていたのは事実なのかやがてそろりと舌を出してミルクを飲みだすと、それから夢中になってぺろぺろと舌を動かしていた。抗生剤を入れたから味が変わって飲まないかと思ったが、全部飲み干してくれて良かった。
「よしよし、いい子だな。いっぱい飲んで早く元気になるんだぞ?」
猫の頭をちょっと撫でると、猫は満足そうに「にゃぁ」と小さく鳴き、ちょっと笑ったように見えた。



