私の言葉を聞いたベラが、ギョッとしたように目を見開いた。
「毒……ですか!?」
「えぇ。間違いないわ」
「で、でも先程一口飲まれて……! お身体は大丈夫でしょうか……!?」
慌てふためくベラに、私は優しい笑みを浮かべる。
「あのくらい大丈夫よ。伯爵令嬢時代、耐性がつくように少量の毒を定期的に摂取させられていたから……」
「そ、それなら……いいのですが……」
ベラが不安そうに眉を下げる。
そんなに心配しなくていいのに……ね。
私はクッキーを口に入れてから、ベラに穏やかに問いかけた。
「ねぇベラ……あなたの好きな花は何?」
「え? 私は……少しお恥ずかしいですが、薔薇が好きです」
「……そう。グレンウィル公爵家にぴったりね」
そう言うと、ベラは恥ずかしそうに、そしてどこかホッとしたように笑った。
「ありがとうベラ。もう下がって大丈夫よ。代わりに、セーラを呼んできてくれるかしら?」
「はい、かしこまりました」
ベラが礼をしてから、部屋を退出した。
……そして、それからすぐに、セーラが勢いよく扉を開けて入ってきたのだった。
「アイリス様! 毒を盛られたってベラから聞いたのですが……ご無事ですか!?」
「えぇ、この通りなんともないわ。あ、クラウド様にはこのこと、黙っていてちょうだいね」
私が淡々と告げると、セーラは目をまんまるにして大声を出した。
「なっ……なぜですか!? アイリス様に危害を加えようとしている人間がいるというのに……!」
「大丈夫よ、心配いらないわ。だって……あなたがいるもの」
「へ……?」
セーラがぽかん……と口を開ける。
私はその様子がおかしくて、クスクス笑ってしまった。
「セーラ、大事なお願いがあるの。……頼まれてくれるかしら?」
私が真剣な顔で告げると、セーラはこくんと頷いた。
「はい、ご命令を」
***
その後は、特になんの問題も起きることなく時間が過ぎていった。
夕食にも毒は盛られていなかったし、クラウド様にも情報は伝わっていない。
そして、まとわりつくような視線も感じなくなった。
あっという間に就寝の時間となり、私はベッドに仰向けになる。
それから、ゆっくりと目を閉じた。
____次の瞬間、首元にひやりとした感覚を覚える。
……間違いない、この感覚は……ナイフだ。
「……動くな。目を開けるのも禁止だ」
冷たい女性の声が、私の鼓膜を揺らす。
それと同時に、刃が首元を微かに掠ったのがわかった。
けれど私は一切動じることなく、目は閉じたまま口を開く。
「____そう。けれど目を開けなくても、私にはあなたが誰だか分かっているわよ?」
「毒……ですか!?」
「えぇ。間違いないわ」
「で、でも先程一口飲まれて……! お身体は大丈夫でしょうか……!?」
慌てふためくベラに、私は優しい笑みを浮かべる。
「あのくらい大丈夫よ。伯爵令嬢時代、耐性がつくように少量の毒を定期的に摂取させられていたから……」
「そ、それなら……いいのですが……」
ベラが不安そうに眉を下げる。
そんなに心配しなくていいのに……ね。
私はクッキーを口に入れてから、ベラに穏やかに問いかけた。
「ねぇベラ……あなたの好きな花は何?」
「え? 私は……少しお恥ずかしいですが、薔薇が好きです」
「……そう。グレンウィル公爵家にぴったりね」
そう言うと、ベラは恥ずかしそうに、そしてどこかホッとしたように笑った。
「ありがとうベラ。もう下がって大丈夫よ。代わりに、セーラを呼んできてくれるかしら?」
「はい、かしこまりました」
ベラが礼をしてから、部屋を退出した。
……そして、それからすぐに、セーラが勢いよく扉を開けて入ってきたのだった。
「アイリス様! 毒を盛られたってベラから聞いたのですが……ご無事ですか!?」
「えぇ、この通りなんともないわ。あ、クラウド様にはこのこと、黙っていてちょうだいね」
私が淡々と告げると、セーラは目をまんまるにして大声を出した。
「なっ……なぜですか!? アイリス様に危害を加えようとしている人間がいるというのに……!」
「大丈夫よ、心配いらないわ。だって……あなたがいるもの」
「へ……?」
セーラがぽかん……と口を開ける。
私はその様子がおかしくて、クスクス笑ってしまった。
「セーラ、大事なお願いがあるの。……頼まれてくれるかしら?」
私が真剣な顔で告げると、セーラはこくんと頷いた。
「はい、ご命令を」
***
その後は、特になんの問題も起きることなく時間が過ぎていった。
夕食にも毒は盛られていなかったし、クラウド様にも情報は伝わっていない。
そして、まとわりつくような視線も感じなくなった。
あっという間に就寝の時間となり、私はベッドに仰向けになる。
それから、ゆっくりと目を閉じた。
____次の瞬間、首元にひやりとした感覚を覚える。
……間違いない、この感覚は……ナイフだ。
「……動くな。目を開けるのも禁止だ」
冷たい女性の声が、私の鼓膜を揺らす。
それと同時に、刃が首元を微かに掠ったのがわかった。
けれど私は一切動じることなく、目は閉じたまま口を開く。
「____そう。けれど目を開けなくても、私にはあなたが誰だか分かっているわよ?」



