麗し。妖し。愛し。

「月、今回も惜しかったな」 

活動場所に向かう途中、そう投げかけられた。

「君のせいでもあるだろう?」

月は少し反発を感じるトーンで返す。

「ははっ。そうかもな」

ふにっ。
角張った指先で月の白い頬をなぞる男子生徒。

――藤神宮 稀楽(とうみぐう きらく)

学園の三大貴公子であり、モデル活動もしている月にも劣らない美形。
アンニュイさのある前下がりな肩上ミディアムヘアは銀髪を染め上げる毛先の黒色が映えている。
五大派閥の人間は美形しか生まれないのだという考察ができるきっかけとなった張本人だ。

月は平均身長より少し小さいため平均身長より高い稀楽には抗えず、されるがままだ。

部室につき、扉を開ける。

「藤神宮は凄いね。私は毎テスト、かなり時間を割いてるつもりなんだけどね」

月はそうこぼす。
実際には月は優秀という言葉以上に優秀だ。

そもそも研究部自体、毎回のテストで常に五番以上の生徒しか入部資格が得られず、部員数も極めて少数であり部活動の中で一番少ないのだ。
故にいつも部室は閑古鳥が鳴いている。
稀楽は励ますように下を向いている月の頭に優しく手を置く。

「俺はこの部活の入部資格が欲しいだけだからな」

「そう・・なのだね。」

その発言を月はそのままの意味として捉えた。
意味が伝わっていなさそうな様子に稀楽は残念そうな表情になる。しかし、すぐ目を細めると口角をあげる。
そして当たりを見回し、人がいないことを確認した。

「そういえば月は俺のことをなんて呼ぶんだっけ?」  

「らく・・くん」

ニヤッ「そう。それ。忘れんなよ」  

満足げに言い残し、月に高級そうな黒い紙袋を渡す。
今日は予定があり、すぐ帰る稀楽は少し物足りなそうな視線を月に向けるとパッと切り替える。

「じゃあ、また明日な。月」

「また明日会おう。らくくんっ」