思わぬ言葉に、まじまじと相手を見つめてしまった。
言われてみれば見覚えがあるような気もするが、いったい誰だっただろう。
「あー……っと、悪い。ぱっと出てこねぇや」
適当に合わせたって仕方がないので、早々に白状した。
困ったように苦く笑っても相手は表情を変えない。
「そう……。だと思った。校外学習のとき、あなたに助けてもらったんだけど」
その決定的なワードを聞いた瞬間、その日の出来事が鮮やかに蘇ってきた。
「あ! おまえか、あのときの」
校外学習とは名ばかりの遠足、ひいては親睦のためのレクリエーションだった。
クラス合同での自由時間が終わってバスへ移動するとき、たまたま俺の前を歩いていたのが彼女。
よく見ると右足を引きずるようにしていて、気になって声をかけたんだった。
『大丈夫か? その足、どうした?』
『……平気』
足首を痛めているようなのに、平静を装って無理に歩いていこうとする。
強がっているのは明白で放っておけなかった。
『嘘つけ。どっかで捻ったんだろ。悪化するとあれだし掴まれよ』
差し出された手と俺を見比べ、心底驚いたように目を見張っていた。
妙な反応で固まってしまってこっちまで困惑したのを思い出す。
『涼? どうかした?』
『悪い、先行っててくれ』
前を歩いていて振り返った羽衣と日和にそう言うと、腕を貸して隣のクラスのバスまで送り届けたのだった。
「……で、俺に何か用?」
そんな出来事はもう数か月も前の話で、それきり関わることもなかった。
そのせいですっかり忘れかけていたし、そもそも名前すら知らない。
いまさらどうしたのだろうかと戸惑っていると、ふと伸ばされた手に腕を掴まれた。
「おい……」
「また助けてくれない?」
「え?」
またしても予想外の言葉に困惑していると、うつむくように目を落とす。
その視線をたどったとき、彼女の足が目に留まった。
「おまえ、それ」
左の足首に湿布とサポーターが巻かれていて、何とも痛々しい様子だ。
「また怪我してんの? 今度は左足かよ」
「あなたのせいだよ」
「俺の……?」
まるで心当たりがなくて、戸惑いのままに目を瞬かせる。
そう言う割に恨みがましい眼差しでも声色でもなく、ただまっすぐに見つめ返してきた。
「この間、わたしとぶつかったでしょう。そのときに捻ったみたい」
「……え。あれも、おまえだったのか」
まったく気がつかなかった。
この前の朝、偶然ぶつかってしまった女子生徒は彼女だったんだ。
苦い気持ちになる。
あの衝撃で捻挫でもしてしまったのだろうか。
「ごめんな。まさかそんな怪我させてたなんて、俺知らなくて────」
「そう思うなら手を貸して。あのときみたいに」



