「ねぇってば、羽衣。どうかしたの? 何か最近元気ないよね」
ついぼんやりしてしまい、顔の前で手を振られて我に返った。
眉を下げる日和と目が合う。
「あ……ごめん。ちょっと寝不足で」
「ぼーっとしてると転ぶぞ。ただでさえドジなんだから」
「そんなこと────」
からかうような涼にむっとして言い返そうとした瞬間、がっ、とつま先が何かに引っかかった。
ふいに小石か何かにつまずいてしまい、息をのむ。
「……っ」
けれど、転んでしまう前に身体が止まった。
右腕を涼が掴んでくれていて、反対側からは日和が抱きとめるような形で両腕を回してくれている。
お陰でことなきを得た。
「ほら、言ったそばから」
「まったくもう。これだから羽衣からは目が離せないんだよ!」
それぞれが口々に言いながら手をほどく。
ほっと気が抜けたのと気恥ずかしいのとで、思わず照れ笑いした。
「あ、ありがとう。ふたりとも」
涼も日和も、頼りないわたしをいつも支えてくれる大事な友だちだった。
日和とは入学してからの仲だけれど、困ったときはいつでも助けてくれる心強い存在。
ふたりと過ごす日常の空気感に触れたからか、少し気持ちが軽くなった。
だけど────。
ヴー、と再び手の中でスマホが震える。
【大丈夫? 足元に気をつけてね】
一瞬にして心臓が冷え、ぞっと肌があわ立った。
いまこの瞬間も見られているんだ。
そう確信すると、たまらず足を止めてしまう。
(誰なの……?)
いったい誰が、どういうつもりでこんなメッセージを送ってくるのだろう。
背筋を悪寒が這い、強張った身体が動かなくなった。
「羽衣?」
先へ進んでいたふたりが振り向く。
はっと顔を上げたそのとき、どん、と肩のあたりに衝撃が訪れた。
「あ、すみません……」
とっさに口にしつつ、相手に目をやって息をのんだ。
「こちらこそ。ごめんね、怪我はない?」
大人びているけれど同い年くらいと思しき彼。
すらりと背が高くて、綺麗な顔立ちをしていた。
(あれ? 何か……)
初めて会ったはずなのに、何となく見覚えがあるような気がする。
面影を探すより先に心が騒いだ。
「おい、大丈夫か?」
「ちょっと待って! 羽衣、もしかしてこんなイケメンと知り合いなの?」
口を開こうとした瞬間、涼と日和が駆ける勢いで戻ってきた。
日和はわたしと彼とを見比べながら色めき立っている。



