「わ、びっくりした。ワッフル?」
苺のイラストが描かれた見慣れたパッケージ。
横から差し出してきた涼を見上げると、頷きが返ってくる。
「バス乗る前に買った。朝だから半分ずつな」
「朝とか関係なくいつも半分ずつじゃん」
思わず笑いながら、割ってくれたワッフルを袋ごと受け取る。
朝でも昼でも放課後でも、涼とはこうして色々なものを半分こすることが日常茶飯事だった。
たぶん、このワッフルは励ましてくれているということなのだろう。
「ありがとう。しかも、わたしの好きな苺味だ」
「俺も好きだから」
「そうだっけ? 甘すぎるって言ってた気がするけどなぁ」
「気のせいだろ。いや、最初はそうだったかもしんないけど、羽衣の影響で好きになった」
ふわりと甘酸っぱい香りが広がり、重たい感情が和らいでいく。
涼はあっという間に食べ終わったようだった。
片手だと食べづらいな、なんて思っていたら、ふいに手の中から傘が消えた。
いつの間にか自分の傘を閉じていた涼が、わたしの傘を持ってくれている。
「あ、ありがとう」
「しょうがねぇな。おまえ、不器用だから」
「涼に言われたくないー」
軽口を叩きながら、ワッフルを頬張った。
その甘さも彼の心遣いも染みてあたたかくほどけていく。
根掘り葉掘り追及することはしないで、真っ先にわたし自身を気にかけてくれたことに救われた。
今日みたいな日に、涼がいてくれてよかった。
だけど、それと同時に申し訳なくなる。
たまらず口にしたことで、余計な気を遣わせてしまった。
(……この話はやっぱり、誰にもできない)
そんなことを思いながら、最後のひとくちを口に運んだとき。
ほとんど直感に近い違和感のようなものが肌に張りつく。
(ん……?)
何だか誰かにじっと見られているような、湿度の高い視線を感じた。
思わずあたりを見回しても特に気になる影はない。
気のせい?
そう思って首を傾げると、涼が訝しげに目を瞬かせた。
「どうした?」
「あ、ううん。何でもない」
傘を受け取りつつ苦笑をたたえ、緩くかぶりを振る。
だけど、何となく嫌な胸騒ぎを覚えた。
◇
【今日もかわいいね】
【早く会いたい】
ぞっとしてたまらずスマホを暗転させる。
知らないアカウントからのそんなダイレクトメッセージが、ここのところ毎日届いていた。
あのとき感じた視線はやっぱり勘違いじゃなかったのだと思う。
あれから、ことあるごとに執拗な眼差しが全身に張りついている気がしてならなかった。
常に誰かに見られていると思うと、気味が悪くて絶えず落ち着かない。
朝も帰りもお構いなしだった。
放課後のいま、こうして学校を出ても何だかどこかで誰かに見られているような気がする。



