想像もしていなかったそんな言葉を、わたしが受け取っていいものか分からない。
ふと、叶人くんは切なげな表情をする。
「でも、結局会えないまま、何も伝えられないまま離れ離れになって。だから、絶対にもう一度会いにいくって誓ったんだ。今度こそ、誰にも邪魔されずに羽衣とずっといたくて……」
彼はわたしの手を取り、固く握り締めていたのをほどくようにして握った。
簡単に離れてしまわないように、指を絡める。
「だから……一緒にいる資格がないなんて、そんな悲しいこと言わないで。お願いだから、自分を責めないで」
────後悔を溶かし込み、罪悪感を凝縮したリボンでずっと胸を締め上げられている感覚だった。
いっそそのまま心がちぎれるほど締めてくれれば償いとして差し出せるのに、彼はほどこうと手をかけている。
こんなふうに許されていいのだろうか。
彼の言葉に救われて、いいのだろうか。
「わたしのこと、恨んでないの……?」
彼の思いを聞いてもにわかには信じられない。
信じることすら身勝手で、罪を重ねているような気がして。
叶人くんは悲しげに目を伏せると、そっと惜しむように手をほどいた。
長い睫毛の影が揺れ、憂いを帯びる。
「……そう羽衣が思ってるって知って、最初は驚いた。そんなふうにずっと罪悪感に縛られ続けてたなんて思わなくて」
そう言うと、おもむろに自身の右手を見つめる。
「どうにかしたかったんだ。そんなに苦しめてしまってたなら、いっそぜんぶ忘れて欲しかった。そうしてでも羽衣の心を救いたかった。そう願っただけなのに、まさか本当にそうなるなんて……」
ぎゅ、と右手を握り締めて言った。
記憶を消せるあの不思議な能力が、そんなきっかけで発現していたなんて思わなくて驚く。
「それで、わたしの記憶を……?」
確かめるように尋ねると、彼は静かに頷いた。
「今度は僕が羽衣を助けたいと思った。僕が苦しんでたときに安心させてくれたみたいに……今度は、僕が羽衣にとって安心できる存在になりたかったんだ」
眉を寄せ、痛切な思いを滲ませる眼差しを受け止める。
その奥に、リボンではなく細い紐状のさまざまな感情や思いが、複雑に絡み合ってもつれているのが窺えた。
「僕にとってのきみみたいに、きみにとっての僕が、唯一で特別な存在でいたかった。僕と同じくらい必要として欲しかったんだ。じゃないと、僕は生きていけない……」
掠れた声と不安定に揺れる瞳が、きっとこれまでひた隠しにしてきた本音。
わたしの手が届かないところまでうずたかく積み上がっていたものが、ぐらぐら揺れていた。



