ずっと、彼に会いたかった。謝りたかった。
だけど、7年間抱え続けてきた罪の重みは、一度記憶をなくして手放したせいか両手でも持ちきれないほどになっていた。
出会わなければよかった。
話さなければよかった。
知らなければよかった。
そもそも最初から、わたしなんていなければよかったのだ。
奪ったものの代償にわたしのすべてを差し出せば、償うことができるだろうか。
叶人くんも、お母さんも、こんなわたしを許してくれるだろうか────。
(ごめんなさい……)
欄干から身を乗り出そうとしたそのとき、ふいにその腕を引かれた。
「……っ」
振り向いた先にいたのは叶人くんだった。
息を切らせながら、ぎゅっと強く握り締めてくる。
「羽衣……」
けれど、弾かれたように手を引いてほどく。
思わずたたらを踏むと、半ばへたり込むようにして座り込んだ。
「ごめんなさい……。ごめんなさい……っ」
何度口にしても足りないのに、涙が止まらなくて言葉が詰まってしまう。
「わたしのせいで……叶人くん、は……。お母さんのことも、わたしが死なせた……。ごめんなさい。ごめん、なさい……」
吸っても吸っても酸素を取り込めず、浅く苦しい呼吸を肩でしながら告げた。
ずぶずぶと地面が沈んでいく感覚がする。
このまま抜けて、飲み込まれるようにまた延々と落ちていくのかもしれない。
「なのに、わたしだけぜんぶ忘れて……。一緒にいる資格なんてなかったのに……っ」
彼を好きになる資格も、好きになってもらう資格もなかった。
あんなふうに愛されて幸せになるなんて許されない。
復讐でも何でも、好きにしてくれたらいい。
差し出せるものなら何でも差し出すし、彼の人生を壊した代償を払わなくちゃ。
きっと、そのための再会だったのだから。
ふわ、とふいに優しい温もりに包み込まれた。
屈んだ叶人くんの甘くて深いにおいが雨に溶け出していく。
突然のことに身じろぎもできなかった。
「……ちがう。僕には、羽衣を責める気持ちなんて微塵もないよ」
切実な声色が染み込んでくる。
腕に込められた力に自ずと安心してしまう。
「羽衣は何も悪くない。むしろ、僕にとっては恩人なんだ」
思わぬ言葉に戸惑うと、叶人くんがそっとわたしを離して柔らかく見つめた。
懐古するみたいにゆっくりと目を伏せる。
「……あの家は、地獄だった。羽衣がいなければ、僕はきっといま生きてもいない」



