「でも、謝ろうとしてたってことは……叶人くんに何かしちゃったんだと思う」
その前提が一周回って手元に戻ってきた。
ずっしりと重みを感じて力が抜けなくなる。
「……じゃあ、そもそも再会って偶然か?」
くすんだ沈黙を涼が破った。
思わず眉を寄せてしまいながら顔を上げる。
「あいつ、誰がどう見てもおまえを特別視してんじゃん。日和も言ってただろ? 羽衣のこと好きなんじゃないかって」
「あー、うん。言ったね」
「でも、それっておかしいだろ? 謝りたいってことは、羽衣が何かあいつに悪いことしたのかも。それなのにあんな態度……」
それはその通りだ。
ざわざわと胸が騒ぎ始めた。
わたしが何か謝らなければならないようなことをしてしまったのだとしたら、叶人くんのあの優しくて甘い笑顔には違和感がある。
「最初からおかしくなかったか? 道で会ったときも羽衣に気づいてただろ」
離れ離れになった小学3年生以来、7年も会っていなかった。
いま思えば、それなのに最初からわたしを見紛うこともなく、久しぶりの再会に驚いた様子もなかった。
『やっと会えた』
言われてみればその言葉だって、偶然再会した相手に出るものだろうか。
「もしかするとあいつは……羽衣がこの学校にいるって知ってて、羽衣に会うためにわざわざ来たんじゃねぇか?」
切迫したような涼の声色と表情を受け、何だか肌寒さを感じた。
ますます身体が強張っていく。
「まさか! なに言ってんの? 飛躍しすぎでしょ、ありえないって。いくら悔しくてもそういう発言は────」
「おまえは何も感じないのかよ」
茶化そうとした日和に、涼は真剣な面持ちのまま向き直った。
「俺にもおまえにもほかのやつにもまったく心開いてないだろ、あいつ。羽衣以外のやつは1ミリも信用してねぇって顔に書いてんじゃん」
それはさすがに言いすぎかもしれないけれど、何となく分からない話ではなかった。
温度のない微笑で、周囲の関心をやんわりと拒絶しているような節が確かにある。
少なくとも彼を取り囲んでいたクラスメートやほかのクラスの人たちは、きっとそれで引き下がらざるを得なくなった。



