謝りたい────。
そう思っていたはずだった。
(でも、何を……?)
わたしが彼に何かをしてしまった?
眉を寄せて思わずその背中を見つめると、ぱっとその隣の日和が振り向く。
「羽衣はどう思う?」
「えっ? な、なに?」
考えに耽っていたせいで、完全に聞き逃していたみたいで慌てる。
日和は「もー」と呆れた素振りを見せるけれど、気を悪くした様子はなくて密かに安堵した。
「だから、購買よりコンビニの方がいいよね? 便利だし品数多いし」
「僕は購買に憧れてたよ。青春って感じがする」
ああ、と何気ない話題にまたしてもほっとしてしまう。
口を開こうとした瞬間、ふいにつんのめった。
「……っ」
バランスを崩して転びかけたわたしの両肩を、とっさに誰かが支えてくれる。
顔を上げた先にいたのは叶人くんだ。
「羽衣、大丈夫?」
「あ……う、うん。ごめん、ありがとう」
図らずも騒いだ鼓動と触れた手の温もりに動揺してしまいながら、誤魔化すように笑う。
一瞬、時間が止まったような錯覚を覚えた。
「……もう、また? 何もないところでこけすぎ!」
「ぼーっとしてるとまたそうなるぞ。ただでさえドジなんだから」
一拍置いて、日和と涼がからかうように言う。
この前も帰り道でつまずいたところをふたりが支えてくれたのだった。
「ドジじゃないってば」
「そんなところもかわいいんだよね、目が離せなくて」
むっとして涼に言い返すけれど、さらりと放たれた叶人くんのひとことに固まってしまう。
わたしだけじゃなく、ふたりまで動きを止めていた。
(いま、なんて……?)
びっくりして思わず見つめてしまうけれど、彼は否定も誤魔化しもしないで当たり前みたいに笑みを返してくる。
戸惑いが増してまた鼓動が騒いだ。
「……心配でほっとけないって意味だろ、ばーか」
そう口を挟んだ涼に軽く額を弾かれる。
からかうような言葉の割に声色には、どこか不機嫌さが滲んでいた。
「痛っ」
「おまえも勘違いさせるようなこと言うなよ。こいつ、耐性ないし鈍感なんだから」
そう言われても叶人くんの表情は崩れなかった。
首を傾げてみせる。
「勘違いじゃない、って言ったら?」
彼のひとことで再び時が止まったような気がした。
わたしを見つめたまま言葉を繋ぐ。
「鈍感ってことはないと思うけど、もしそうなら……」
そこで一度切ると、踏み込んできてわたしの耳元に顔を寄せる。
「分かりやすく言葉にしなきゃね? ちゃんと伝わるように」



