虐げられた呼人の姫は幸せの王子の至上の愛に溺れる

「外でも、出ようかな」

独り言を呟いた。これで何度目だろう。


今は、やっぱり、外に出よう。

外に出て、気持ちを落ち着かせた方が良い選択肢だな。

まあ、そもそも、私が嫌だと思っていることなんて、軽くてちっちゃいと思うけれど。



『キィィィ』

門を開けて、鍵で閉めた。

「風が美味しい」

風が、信じられないくらいに美味しかった。


最近私は、空を眺めるのにハマっている。


ある時は黄金色の空、ある時は赤色と灰色が混ざっている空。


今日は……、虹色の空だった。

レインボーのグラデーションが、あおいあおい空を彩っている。


「おい」

後ろから人の声がした。

だ、誰っ?!


ばっと振り向くと、そこには西園寺さんの姿が。


前も思ったけれど、どうしてこんな田舎町にいるんだろう。

西園寺という大変高貴な苗字は、the都会くらいにしかいないのでは。


「これ」

ハンカチを差し出してくれた西園寺さん。でも、何に使うの?

「何のご用に使うのですかっ」

西園寺さんは少し苦笑し、「早く持て」と私を急かした。


「お前が泣いてたから」

「違います。私は泣いていません」


全力で否定する私を、西園寺さんは一蹴した。


「自分の苦しみから逃げんな!」


今までお前が苦しみから逃げてきた?

苦しみから目を背けてきた?

自分を大切にしてきた?


自分がおろそかにしていたこと全部、見透かされていた。



「す、すみません……っ」

西園寺さんは目を真剣にしながら、


「ごめんな。言い方がきつかったな」


と謝った。


「私が謝らなくちゃいけませんっ」

謝らなくちゃいけないのは、わた——。


「それが、雫が苦しんでる原因?」


初めて、「お前」じゃなくて、「雫」と言われた。

自分の本名で名前を呼ばれたのなんて、いつぶりだろう。


「雫の優しさとか自己犠牲は、確かに強さでもあるけど、弱さでもあると思う。

雫、勉強したいんだろ。俺が教えてやる」


えっ。

私の暗くてビクビクしている気持ちは一気に塗り替えられ、驚きと恥ずかしさで染まった。


西園寺さんに、私が勉強を教えてもらうっ?


「そんな恐れ多いことできません」

「いいから、乗れ」


私は高級車に乗せられ、大豪邸に着いた。


それにしても、大きなお家だなぁ。

私の家もすごいけれど、やっぱり何百倍も豪華だな。


「「「「「「「「「幸様、お帰りなさいませ」」」」」」」」」

お手伝いさん達の数もハンパない。

ずらりと並んだお手伝いさん達を見て、私はあははと苦笑いするしかなかった。


「ただいま」

幸さんは返事をして、私の方に向き直った。


「この子の面倒を見てやってくれ」

い、いきなり——?!

これは流石にみんな拒否するんじゃ。


「貴女の名前は?!」

近くにいた私よりちょっと上の女の子が、たずねてきた。