翌日、アルバートは軽装で城下町へとやって来た。
昨日アダムズ魔石工房が狙われていると聞いてから、アルバートは部下のうち、副団長と信頼の置ける古参数名に事情を説明しておいた。
そして今日は実際にアダムズ魔石工房へと足を運んできた。
アダムズ魔石工房は、城壁沿いの裏通りにほど近い小さな工房だった。城壁の反対側は騎士団の訓練場にほど近い場所だ。
壁は日が当たらないせいか苔むしており、扉の小窓も黒ずんでいて中がまったく見通せない。
「思ったよりも近いが、ずいぶん小さい店だな……」
アルバートはそう呟き、店の戸を叩いた。しかし、反応はない。繰り返し何度か叩く。すると、店の中からどたどたと足音がした。
そして荒々しく戸が開いた。
「うるさいぞ、ドミニク。鍵を忘れたのか?」
顔を出したのは細身の青年だった。
ひょろりとした体躯に厚手のエプロンを掛け、その下には、元は白かったのだろう汚れたシャツと、同じように汚れたデニムのボトムをまとっている。
ぼさぼさの白銀の髪が眼鏡にかかり、その奥で濃い灰色の瞳がアルバートを睨んでいた。
「誰だ?」
さほど低くはないが、うなるような不機嫌な声にアルバートは息を飲んだ。
しかし青年の睨む瞳に不審げな色が混じったことに気づき、アルバートは慌てて口を開いた。
「私は王国騎士団団長、アルバートと言う。貴殿がアダムズ魔石工房の職人か?」
鋭い瞳が、アルバートを上から下までなめ回すように見つめた。
そして唇がわずかに下がる。
「……違う。失礼する」
「待て、では職人に会わせてほしい。他国から狙われているんだ」
「そんなのはいつものことだ。失礼する」
閉まりかかる扉に、アルバートは慌てて体をねじ込んだ。
「やはり職人殿ではないか。貴殿の作品にはいつも世話になっているんだ。どうか、その命を守らせてほしい」
アルバートは懇願するように青年を見つめた。
青年はあっけに取られたようにアルバートを見つめてから、手でぼさぼさの髪をかき上げる。
「……騎士様ってのは、気障なセリフを吐かなきゃ死ぬのかよ。あーやだやだ、ドミニクのいないときに」
ドアノブにかかっていた手が離れた。青年は困ったような、怒ったような顔で踵を返す。
「そこにでかい図体で挟まっていられると商売上ったりだ。さっさと入って戸を閉めろ」
「話を聞いてくれるのか。感謝する」
アルバートは青年の背中を追って、店の中に入った。
昨日アダムズ魔石工房が狙われていると聞いてから、アルバートは部下のうち、副団長と信頼の置ける古参数名に事情を説明しておいた。
そして今日は実際にアダムズ魔石工房へと足を運んできた。
アダムズ魔石工房は、城壁沿いの裏通りにほど近い小さな工房だった。城壁の反対側は騎士団の訓練場にほど近い場所だ。
壁は日が当たらないせいか苔むしており、扉の小窓も黒ずんでいて中がまったく見通せない。
「思ったよりも近いが、ずいぶん小さい店だな……」
アルバートはそう呟き、店の戸を叩いた。しかし、反応はない。繰り返し何度か叩く。すると、店の中からどたどたと足音がした。
そして荒々しく戸が開いた。
「うるさいぞ、ドミニク。鍵を忘れたのか?」
顔を出したのは細身の青年だった。
ひょろりとした体躯に厚手のエプロンを掛け、その下には、元は白かったのだろう汚れたシャツと、同じように汚れたデニムのボトムをまとっている。
ぼさぼさの白銀の髪が眼鏡にかかり、その奥で濃い灰色の瞳がアルバートを睨んでいた。
「誰だ?」
さほど低くはないが、うなるような不機嫌な声にアルバートは息を飲んだ。
しかし青年の睨む瞳に不審げな色が混じったことに気づき、アルバートは慌てて口を開いた。
「私は王国騎士団団長、アルバートと言う。貴殿がアダムズ魔石工房の職人か?」
鋭い瞳が、アルバートを上から下までなめ回すように見つめた。
そして唇がわずかに下がる。
「……違う。失礼する」
「待て、では職人に会わせてほしい。他国から狙われているんだ」
「そんなのはいつものことだ。失礼する」
閉まりかかる扉に、アルバートは慌てて体をねじ込んだ。
「やはり職人殿ではないか。貴殿の作品にはいつも世話になっているんだ。どうか、その命を守らせてほしい」
アルバートは懇願するように青年を見つめた。
青年はあっけに取られたようにアルバートを見つめてから、手でぼさぼさの髪をかき上げる。
「……騎士様ってのは、気障なセリフを吐かなきゃ死ぬのかよ。あーやだやだ、ドミニクのいないときに」
ドアノブにかかっていた手が離れた。青年は困ったような、怒ったような顔で踵を返す。
「そこにでかい図体で挟まっていられると商売上ったりだ。さっさと入って戸を閉めろ」
「話を聞いてくれるのか。感謝する」
アルバートは青年の背中を追って、店の中に入った。



