騎士団長は天才魔石職人を手放さない

 その後、少年……魔石工房の職人の弟子兼小間使いであるドミニクは、アルバートの篭手と兵士全員分の盾を調整して帰っていった。

 残されたアルバートは、壁に立てかけてあった古いサンドバッグ相手に軽く剣を振る。サンドバッグはぱっくり割れて砂が溢れた。


「団長、ごきげんですね」


 兵士の一人が箒とちりとりを持ってやって来た。アルバートが受け取ろうとしたが、兵士は渡さなかった。


「今回の品も素晴らしいからな。ここまで軽く、手に馴染む魔石武器はなかなかない」


 兵士は頷き、砂を集めた。


「アダムズ魔石工房でしたか。たしか職人とあの小間使いのドミニクの二人でやってるんですよね」

「そう聞いている。しかし納品に来るのは、いつもあのドミニク少年のみだな」

「工房主は偏屈な老婆って聞きましたよ」


 別の兵士が訓練用の木剣を運びながら口を挟んだ。


「俺は天才のじいさんがドミニク拾って技術を教えこんでるって聞いたけど」

「え? 人嫌いの天才が親戚のドミニクとアレな関係って」


「アレって?」


 集まってきて好き勝手に言う兵士たちに、アルバートは苦笑しながら装備を外し、片付けに向かった。

 魔石を使用した武器は、扱いを誤れば使い手ごと吹き飛ばす。

 実際に、去年も新人が一人片腕を失う大怪我をしていた。

 それでも騎士団が魔石武器を手放せないのは、戦場での威力が桁違いだからだ。

 だからこそ慎重に訓練を行う必要があり、その反動で兵たちは訓練後は気を抜きがちになる。

 アルバートもそれをわかっているから、あまりうるさいことは言わずにその場を離れた。

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