騎士団長は天才魔石職人を手放さない

 その後、王国の調査兵が遣わされ、アルバートは引き継ぎをしてイヴと共に王都へと戻った。

 イヴを工房に送り届けてから騎士団の詰め所に戻り、数日間は各所への報告に追われた。

 ようやく落ち着きを取り戻してから、アルバートは再びアダムズ魔石工房へと足を運んだ。事件が解決したから、荷物を引き上げなくてはいけない。


「団長さん、おかえりなさい!」


 扉を叩くと、ドミニクが笑顔で出迎えてくれた。彼に「おかえりなさい」と出迎えてもらえるのもこれが最後かと思うと、アルバートの目頭が熱くなる。

 奥の作業机では、いつもどおりイヴが何かの図面を引いていた。


「イヴ、長いこと世話になった」

「ああ、まったくだ」


 イヴは顔も上げずに答えた。


「まったく、でかい図体で長々と居座りやがって。邪魔ったら仕方ない。ドミニクもすっかり懐いちまって、アルバートがたった数日いないだけでめそめそし通しだ」

「先生の方こそ!」


 ドミニクがくすくす笑いながら、床に散らばっていた図面を拾い、棚に片づけた。
 アルバートは言葉を見つけられずに、イヴの後ろに立っていた。


「だがまあ、あそこはアルバートの部屋だ」

「……えっと」

「やっぱり、鎧は本人に直接着せた方が、魔石と鎧の馴染みを確認しやすいし」

「イヴ、それは」


 ゆっくりとイヴが顔を上げた。その困ったような、怒ったような顔がどういう意味なのか分からず、アルバートは口を開いて閉じた。

 イヴはアルバートの顔を見てクスリと笑った。


「ご覧のとおり、この工房はそれなりに広い」


 そのまま部屋を見回すイヴに、つられてアルバートも工房内を見回した。


「護衛が一人くらいいても困らない」


 イヴが再びアルバートを見上げる。

 さすがにアルバートにも意味がわかった。跪き、イヴの手を取る。


「お側に、置いていただけるだろうか」

「喜んで」

 アルバートはイヴの手の甲に口づけた。

***