イヴが捕らえられていたのは、王都から隣国との国境と反対側にある小さな港町だった。アルバートは数名の部下とともに、倉庫街へと向かう。
その中に、隣国からの輸入品を保管する倉庫の一帯があった。
じっとりと湿った潮風が倉庫の壁を濡らしている。
「わかりやすいと言えばそうだが、和平を結ぼうとしている今、ここを家探ししようとする我が国の者はいないからな」
アルバートがつぶやき、部下たちは顔をしかめた。
「だからこそ、でしょうね。我々が侵入できなければ強力な魔石武器を入手できて、和平交渉が終わる前に戦争を仕掛けられますし、侵入できればそれを理由に戦争に持ち込めます」
それを見越して、アルバートと部下たちは騎士団の甲冑を身に着けずにやってきた。
代わりに、先日イヴが新作として用意してくれた鎧を装着している。まだ正式に騎士団に納品されていないため、騎士団のエンブレムはついていない。それぞれの持つ剣や盾も、騎士団のエンブレムのついていない旧式や、個人で所蔵していた品を用意してきた。
「さて……この中のどれかのはずだが」
アルバートは唇を噛んで倉庫街を見渡した。
隣国が管理する倉庫は全部で五棟、どれも広大な敷地を有している。
「さすがにこの短時間では棟までは絞れませんでした。申し訳ない」
「いや、止むをえまい。しかし昼過ぎには貨物船の入港予定があるから、それまでにイヴを救い出さなくてはいけない」
アルバートは耳を澄ませた。
おそらく相手は先ほどと同様に魔石無効の魔具を常備しているはずだ。
「魔石通信機を使いながら周回しよう。通信が途切れた個所を調べる」
「イエッサー!」
アルバートは五棟のうち、中心にある棟の屋根の上で待機した。一番足の速い兵士が外側をぐるりと走り、通信が途切れる方角を探す。
『……団長、南から一周します』
「了解」
『……西端に到着、今のところ通信に違和感なし』
「了解」
『……北端に到着、今のところ通信に違和感なし』
「了解」
『……東端に到着、今のところ通信に違和感なし』
「了か……おい、聞こえるか……!?」
突然通信機ががさがさと異音を発した。
しばらくして異音が止み、部下の声が戻ってくる。
『南端に戻りました! 南東方面、調査します!』
「了解! 全兵士に告ぐ、南東倉庫、調査開始!」
「イエッサー!」
やがて、一か所の倉庫で複数の気配を見つけた。
倉庫を挟むようにして魔石通信機を起動したが、うんともすんとも言わない。
「……ここだな」
アルバートは部下たちと目配せをして配置についた。
「行くぞ」
「イエッサー」
扉を蹴破った瞬間、アルバートの視界にイヴの姿が入った。
倉庫の一番奥にイヴが縛られた状態で座らされ、その両脇には隣国の兵士が魔石の効果を打ち消す魔具を持って立っていた。その手前には十数名の見張りが倉庫内をうろうろと歩き回っている。
「イヴ」
アルバートの口から、低い声が漏れた。
見張りの兵全員がはっとしてこちらに顔を向けた瞬間、アルバートの前に立っていた弓兵が魔具を持つ隣国兵二名を素早く射抜いた。
この弓もイヴの作品で、同時に三射まで撃てる魔石武器だが、射出される矢自体は普通の矢なので、魔具に妨害されることなく軽々と兵士の頭を射抜く。
兵たちが持っていた魔具がからんと音を立てて床に落ちた。
同時にアルバートの部下たちは素早く腰を落とす。
「イヴ、伏せろ!!」
アルバートが吠えた。
その手の剣が横薙ぎに払われ、手前の見張りの兵が一掃された。斬撃を追って一番足の速い兵がイヴの元に駆け寄り、縛られた彼を担いで倉庫から飛び出そうとして……倒れた。
兵の足からは血が噴き出ている。
「団長! 彼を!!」
倒れた兵が叫んだ。
アルバートは素早くイヴに駆け寄った。それと同時に背中から撃たれたが、威力が低く鎧を穿つほどではない。
どさっと音がして、弓を持ったままの隣国兵が二名落ちてきた。
アルバートがイヴをかばったまま振り向くと、入口で待機していた弓兵が倉庫の二階に弓を向けていた。
「団長、応援が来る前に!」
「ああ、全員、撤収!!」
倒れていた兵を他の者が回収し、全員で倉庫から離脱した。
***
その中に、隣国からの輸入品を保管する倉庫の一帯があった。
じっとりと湿った潮風が倉庫の壁を濡らしている。
「わかりやすいと言えばそうだが、和平を結ぼうとしている今、ここを家探ししようとする我が国の者はいないからな」
アルバートがつぶやき、部下たちは顔をしかめた。
「だからこそ、でしょうね。我々が侵入できなければ強力な魔石武器を入手できて、和平交渉が終わる前に戦争を仕掛けられますし、侵入できればそれを理由に戦争に持ち込めます」
それを見越して、アルバートと部下たちは騎士団の甲冑を身に着けずにやってきた。
代わりに、先日イヴが新作として用意してくれた鎧を装着している。まだ正式に騎士団に納品されていないため、騎士団のエンブレムはついていない。それぞれの持つ剣や盾も、騎士団のエンブレムのついていない旧式や、個人で所蔵していた品を用意してきた。
「さて……この中のどれかのはずだが」
アルバートは唇を噛んで倉庫街を見渡した。
隣国が管理する倉庫は全部で五棟、どれも広大な敷地を有している。
「さすがにこの短時間では棟までは絞れませんでした。申し訳ない」
「いや、止むをえまい。しかし昼過ぎには貨物船の入港予定があるから、それまでにイヴを救い出さなくてはいけない」
アルバートは耳を澄ませた。
おそらく相手は先ほどと同様に魔石無効の魔具を常備しているはずだ。
「魔石通信機を使いながら周回しよう。通信が途切れた個所を調べる」
「イエッサー!」
アルバートは五棟のうち、中心にある棟の屋根の上で待機した。一番足の速い兵士が外側をぐるりと走り、通信が途切れる方角を探す。
『……団長、南から一周します』
「了解」
『……西端に到着、今のところ通信に違和感なし』
「了解」
『……北端に到着、今のところ通信に違和感なし』
「了解」
『……東端に到着、今のところ通信に違和感なし』
「了か……おい、聞こえるか……!?」
突然通信機ががさがさと異音を発した。
しばらくして異音が止み、部下の声が戻ってくる。
『南端に戻りました! 南東方面、調査します!』
「了解! 全兵士に告ぐ、南東倉庫、調査開始!」
「イエッサー!」
やがて、一か所の倉庫で複数の気配を見つけた。
倉庫を挟むようにして魔石通信機を起動したが、うんともすんとも言わない。
「……ここだな」
アルバートは部下たちと目配せをして配置についた。
「行くぞ」
「イエッサー」
扉を蹴破った瞬間、アルバートの視界にイヴの姿が入った。
倉庫の一番奥にイヴが縛られた状態で座らされ、その両脇には隣国の兵士が魔石の効果を打ち消す魔具を持って立っていた。その手前には十数名の見張りが倉庫内をうろうろと歩き回っている。
「イヴ」
アルバートの口から、低い声が漏れた。
見張りの兵全員がはっとしてこちらに顔を向けた瞬間、アルバートの前に立っていた弓兵が魔具を持つ隣国兵二名を素早く射抜いた。
この弓もイヴの作品で、同時に三射まで撃てる魔石武器だが、射出される矢自体は普通の矢なので、魔具に妨害されることなく軽々と兵士の頭を射抜く。
兵たちが持っていた魔具がからんと音を立てて床に落ちた。
同時にアルバートの部下たちは素早く腰を落とす。
「イヴ、伏せろ!!」
アルバートが吠えた。
その手の剣が横薙ぎに払われ、手前の見張りの兵が一掃された。斬撃を追って一番足の速い兵がイヴの元に駆け寄り、縛られた彼を担いで倉庫から飛び出そうとして……倒れた。
兵の足からは血が噴き出ている。
「団長! 彼を!!」
倒れた兵が叫んだ。
アルバートは素早くイヴに駆け寄った。それと同時に背中から撃たれたが、威力が低く鎧を穿つほどではない。
どさっと音がして、弓を持ったままの隣国兵が二名落ちてきた。
アルバートがイヴをかばったまま振り向くと、入口で待機していた弓兵が倉庫の二階に弓を向けていた。
「団長、応援が来る前に!」
「ああ、全員、撤収!!」
倒れていた兵を他の者が回収し、全員で倉庫から離脱した。
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