終わらない夜に


「……そっか。ありがとう、話してくれて」

全てを話し終えたところで、名執さんは優しく私の頭を撫でた。
変わらないその態度に、嫌われたり引かれたりしていないとわかって安堵する。

「親御さんが本当に大変なら、その毎月の仕送りは俺が払っても構わないけど」
「え!?それはダメです、絶対に!名執さんが頑張って働いたお金ですから!」

名執さんの収入から見れば大きな額ではないのかもしれない。
だけどそれは彼にとってはもちろん、私にも母にも絶対によくない。

思わず立ち上がって言う私に、名執さんはおかしそうに笑って座るように促した。

「本当に大変なら、ね。でも聞いた感じだと、本人が働くなり必要に応じて行政に相談するなり、まだ方法はいろいろありそう」
「相談……考えたことなかったです」
「つぐみはひとりで抱えすぎ。方法はもっとあるかもしれないんだし、子供だからといって全てをつぐみが背負う必要なんてないんだよ」

名執さんのその言葉は、この肩にのしかかっていた重いものをそっと外してくれるような言葉だった。

「つぐみにとっては難しいかもしれないけど……親御さんに一度ちゃんと話してみたらどうかな」
「え……?」
「本当に困ってるなら月いくらまでって上限を決める。それ以上は要求されても『渡せない』って断る、無視をする」

母の要求を拒否する。そんなこと、考えただけで怖くて汗が噴き出てくる。
けれど、私の中の恐怖心と向き合うように名執さんはこの目を見つめる。

「その恐怖心を今すぐ消すのは難しいと思う。だけど、つぐみの人生はつぐみのものだから。親であろうともそれは奪えないんだよ」

しっかりと言い切ってくれた彼の言葉にはっとした。

どんなに否定されても、怒鳴られても虐げられても、私の人生は私のもの。
そんなふうに言われたの、初めてだ。

子供の頃から周りの大人は親身になどなってくれなかった。

『お母さんもいろいろ大変みたいだから、頑張ってね』

そう言うだけで、助けてなんてくれなかった。
だけど今の目の前にいる名執さんは、私とちゃんと向き合って言葉をくれている。

実感した途端、それまで話の最中には出なかった涙がこぼれだす。
頬を伝い膝の上に落ちる涙を、彼はそっと指先で拭ってくれた。

「つぐみはひとりじゃない。俺が支えるから、一緒に頑張ろう」
「はい……」

心地よい夜風が頬を撫でる中、そっと唇が重なった。
触れるだけの優しいキスを数回交わすと、名執さんは愛しげに私をぎゅっと抱きしめる。

……愛しいな。
優しく温かい彼から離れがたく、その胸元に顔をうずめ続けていると、名執さんは抱きしめる腕に少し力を込めた。

「……今日、帰したくないって言ったら困る?」
「え……?」

耳元で囁く言葉の意味をゆっくり察して、頬が熱くなる。
だけど抵抗感はなくて、むしろこのまま彼のぬくもりをもっと深くまで感じたいと求めてしまう。

「……困らない、です」

熱くなる顔を見せられず、その胸に顔をうずめたまま答えると、名執さんは私の耳に小さくキスをした。