リハーサルから始まる恋

リハーサルを見せてもらった日の夜、愛斗はスマートフォンの画面を見て思わず笑顔になった。
叶正子からのLINEだ。
「今日はリハーサルから来てくれてありがとうございます。また会いましょう」
愛斗は丁寧に返事を打ち、正子と直接やり取りできたことが、何よりも嬉しくてたまらなかった。
その頃、正子はありさと話をしていた。
「ねえ正子さん、愛斗くんのこと好きなんでしょ?」
「えっ、そんなわけないでしょ」
「絶対好きでしょ。だって愛斗くんの前では、今まで見せたこともないような女の顔になってたもの。私、見逃さなかったわよ」
正子は少し照れながら、本当の気持ちを打ち明けた。
「実はね…。自転車が飛び込んできたとき、あなたが私を強く抱きしめて守ってくれたでしょう。あの瞬間から、ずっと胸がドキドキしているの」
「それ、完全に恋だよ!」
ありさの言葉に、正子は自分が愛斗に心惹かれていることを、はっきりと自覚した。
翌日、愛斗はいつものように仕事へ向かい、休憩時間に友人の拓哉と話をしていた。
「昨日さ、サーカスのライブ、楽しみすぎて2時間も早く着いちゃったんだ。そしたら正子さんが『リハーサル、見ていいよ』って言ってくれて、特別に参加させてもらって。会場に行く途中で、危なく自転車にぶつかりそうになったから、思わず正子さんを抱きしめて守ったんだけど…、近くで見た正子さん、本当に可愛らしかったよ」
「それは良かったね!」
「うん、本当に幸せだった」
「もしかしたら、それがきっかけで付き合えるかもしれないぞ」
「まさか、そんなことありえないよ」
「分からないよ、何がきっかけになるか」
そのとき、二人の話を聞いていた松本が、横から割り込んできた。
「芸能人と付き合えるわけないでしょ、現実見なさいよ。あの人は70代でしょ、ただのおばあちゃんじゃない。そんな人と付き合うなんて、年が離れすぎてるわ。そんなおばあちゃんを好きにならないで、もっと若い人を好きになりなさい。それに、待ち受け画面にしてるなんて、おかしいでしょ!」
愛斗は携帯を胸に抱き、はっきりと言い返した。
「俺が誰を好きでいようと、俺の自由ですよね。正子さんはとても綺麗で、若々しくて素敵な人だ。俺の推しを悪く言うのは、やめてください」
「どこが綺麗なのよ、ただのおばあちゃんじゃない。全然可愛くないわ」
「俺から見れば、あんたより正子さんのほうがずっと綺麗だよ」
松本は愛斗の言葉に呆れた様子で、その場を立ち去っていった。
「気にするなよ。あいつは何も悪いこと言ってないんだから、気にしなくていい」
「ありがとう、拓哉」
「うん、頑張れ」
愛斗は拓哉に励まされ、その後は集中して仕事を続けた。
一方、叶高は病院を受診し、検査の結果を聞いていた。医師からは「心疾患です。もし一ヶ月でも発見が遅れていたら、命にかかわっていた可能性が非常に高かったです」と告げられた。
診察を終えた高は、正子、勇一、ありさを呼んでこのことを話した。
「心疾患だった。先生には、もう少し発見が遅かったら危なかったと言われたよ。本当に、早く気づいてよかった」

三人は顔を見合わせて安堵し、同時に愛斗の言葉を思い出した。
「愛斗くんが早く病院に行くように言ってくれたからだね。本当に助かったわ」
「そうだよ、愛斗くんのおかげだ」
高は心から感謝し、愛斗に改めてお礼を伝えようと心に決めた。
「本当に愛斗くんには感謝しないとね。あの子がいてくれて、本当によかった」
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