「ええと、父です。このあと、手料理をごちそうするから、迅さんに嫌いなものがないか聞かれてたんです。娘の旦那様になる人が挨拶に来るからって、ガチガチに緊張しちゃってて。お母さんも横で笑ってました」
「父って、お義母さんの……」
「再婚相手です。宏昌なので、ヒロ君。母がそう呼んでたので。お父さんって呼べないまま大人になっちゃいました」
少し照れくさそうに笑う透子に、迅は胸の奥から力が抜けていくのを感じた。
嫉妬の相手が、これから『お嬢さんをください』と正式に頭を下げに行く彼女の父だったとは。
「……男に言い寄られてるのかと思った」
「もう、そんなわけないじゃないですか」
透子にあっさりとした否定され、迅は小さく息を吐いた。
もし男に粉を掛けられたとしても、透子が相手にするはずがない。当たり前だし、頭では理解している。
(でも、君のことになると、俺は途端に情けなくなるんだよ)
大会社の経営者として、常に冷静な判断を下しているのに、彼女を前にするとただの余裕のない男になる。
そして、そんな自分を嫌いだとは思わないのだから、困ったものだ。
「父って、お義母さんの……」
「再婚相手です。宏昌なので、ヒロ君。母がそう呼んでたので。お父さんって呼べないまま大人になっちゃいました」
少し照れくさそうに笑う透子に、迅は胸の奥から力が抜けていくのを感じた。
嫉妬の相手が、これから『お嬢さんをください』と正式に頭を下げに行く彼女の父だったとは。
「……男に言い寄られてるのかと思った」
「もう、そんなわけないじゃないですか」
透子にあっさりとした否定され、迅は小さく息を吐いた。
もし男に粉を掛けられたとしても、透子が相手にするはずがない。当たり前だし、頭では理解している。
(でも、君のことになると、俺は途端に情けなくなるんだよ)
大会社の経営者として、常に冷静な判断を下しているのに、彼女を前にするとただの余裕のない男になる。
そして、そんな自分を嫌いだとは思わないのだから、困ったものだ。



