結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

(まぁ、その嘘が透子が俺を好きだと気づくきっかけになったのなら感謝すべきか)

――『はい、やきもちです。こんな気持ちになったのは初めてでした』

 透子にそう告白されたのを思い出して、思わず口角が上がる。

 嫉妬の感情すらむしろご褒美だと本気で思うなんて、以前の自分なら絶対にありえなかった。愛しい婚約者にだいぶ骨抜きにされている。

 屋敷に着いた迅がサンルームに向かうと、中で母と透子、そして亜里沙がいるのが見えた。

(なんで亜里沙いるんだ?)

 ただならぬ雰囲気に、少し様子をうかがっていると、母だけがこちらに気づき、意味ありげに目を細める。きっと亜里沙を呼びつけたのは母だろう。

「亜里沙さんが許す、許さないではなく、迅さんが選んだのは私です。だから私は、迅さんの隣に立つ努力をし続けます」

 自分勝手な感情をぶつける亜里沙に対して、毅然とした態度で返す透子は凛としていて、思わず見とれてしまう。

(ああ、また透子に惚れ直したな)

「その通りだ。さすが俺の婚約者だな。頼もしい」

 中に入っていくと透子は驚いた顔をしたが、迅が笑みを向けると、すぐに安堵したように口元を緩めた。

「じ、迅……」