結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 迅は『外堀を埋めるつもりだったんだが、母があそこまで前のめりになるとは思わなかった』と苦笑していた。

「あれほど結婚したがらなかった迅が、その気になったんだから、応援しようと思ったのよ。お嫁に来てくれることになってよかったわ……あの人が生きてたらどんな顔したかしら」

 詩乃はティーカップを持ったまま目を細めている。きっと亡き夫を思い出しているのだろう。

「……真壁家にふさわしくないと、お認めにならなかったかもしれません」

 思わず弱音が口をつく。迅の妻になる覚悟はできているが、まったく不安がないわけではなかった。

「なんだかんだ言いながら、認めたと思うわよ。不器用な人だったけど、家族への愛情は本物だったもの」

「お義母様……」

 迅は両親の仲は冷えていたと言っていたが、夫を語る詩乃の表情は驚くほど穏やかだった。

 長年連れ添った夫婦の間には、当人たちにしかわからない絆があったのかもしれない。夫婦の数だけ、その形があるのだと透子は改めて思う。