結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「どう、気に入った?」

「はい。こんなに上品な香りのアールグレイ、初めてです」

「ふふ、よかった。貴重な茶葉をフランスから取り寄せたの。このクッキーとも合うから試してみて」

 繊細なベルガモットの香りを楽しむ透子に、テーブル越しに詩乃が優しく微笑みかけた。

 迅と心を通わせてから一週間、日曜の今日、透子は詩乃に招待され、真壁家の屋敷のサンルームでティータイムを過ごしていた。

 大きなガラス窓から午後の柔らかな陽光が差し込み、手入れの行き届いた草花が色鮮やかに咲いている。白を基調とした家具は上品で、まるで高級ホテルのラウンジのような空間だった。

「迅に、透子さんと見せかけの婚活をしているって聞いたときは、ものすごく驚いたわ」

「騙すようなことをして、申し訳ありません」

「いいのよ。迅が無理やりあなたを巻き込んだから」

 透子が肩を竦めると、詩乃は優雅な仕草でティーカップを持ち上げた。

 迅の話によると、彼は母や恭弥に透子との関係をすべて打ち明けた上で、結婚に協力してくれているように頼んでいたらしい。だから、パーティーのときに大歓迎してくれたようだ。