結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 ベッドサイドランプだけが灯る薄暗い部屋の中で声を落とされ、透子はいたたまれなさに肩をすくめた。

「ごめんなさい……」

 あのあと、そのまま寝室へ連れて行かれそうになった透子は、慌てて迅を引き止めた。

 入浴も済ませていない状態で肌を見せるなんて、とてもではないが耐えられなかったのだ。

 迅はしぶしぶ透子の主張を受け入れ、結局、軽く食事を取り、交代で入浴する流れになった。

 甘い空気を思い切り壊してしまい、しらけさせてしまっただろうかと少し不安になったが、杞憂だった。

 すべての支度が整うのを待ってから、迅は改めて透子を寝室へと誘ったのだ。

(なんか時間をかけた分、現実感が迫ってきて恥ずかしい……それに、お風呂上がりの迅さん、色気が大変なことになってる)

 ラフに下ろされた前髪はまだ少し濡れていて、そこから覗く視線は熱を帯びて見える。部屋着代わりの黒いTシャツ越しでも、逞しい肩や胸板のラインがはっきりわかる。

 ただ上から見下ろされているだけで、鼓動がバクバクとうるさい。

「怖いか?」

「怖くない……とは言えないです。だって、初めてですから」