結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 リビングボードの上に置かれていたベルベットのケースを手に取ると、こちらへ戻ってきた。

「これは君のだ。もう返すなんて言うなよ」

 透子の左手を取り、箱から出した指輪を薬指に通す。

 その輝きはなおも眩しいほどだが、気持ちが通じた今、不思議と自然と手に馴染んでいるように思えた。

「もっと特別な場所で、いろいろ準備して、完璧なタイミングでプロポーズしようと考えていたんだが、我慢できなかった」

 隣に座った迅は、きらめきを宿した透子の指先を、確かめるように撫でた。

「ありがとうございます。指輪も、プロポーズもすごく嬉しい……」

 どんな特別な場所や飾られた言葉よりも、彼のまっすぐな想いそのものが、透子にとってはなによりも宝物に思えた。

「さっき、いろいろ自覚して、混乱してしまったって話したんですけど、私、迅さんが亜里沙さんのことを好きだったらと思ったらすごく焦ったんです」

 言いながら透子は迅にそっと寄り添う。自分の素直な思いも彼に知ってもらいたかったのだ。

「つまり、俺が亜里沙に取られると思ったんだな。俺はずいぶん君に好かれてたんだな」

 隣から揶揄う声が聞こえてきた。