結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 憮然とした表情の迅を見上げながら、透子の胸にはじんわりと安堵が広がっていく。

「なるほど、それで気を使って出ていこうとしたんだな」

「いろいろ自覚して、混乱してしまったんです……」

 あれをきっかけに、自分の恋心をはっきりと思い知ってしまったのだ。

(……この流れで、私の気持ち言えるかもしれない)

 そう気づいた途端、鼓動が不規則な音を立てる。

 一度息を吸い込み、声を上げようとしたそのとき、不意に透子の指先が彼の掌に包まれた。

「迅さん?」

「――透子」

 低く名を呼ばれ、胸の奥が小さく跳ねた。

「俺は透子にすっかり嵌ってる。結婚したくなくて強引に始めた交際だったのにな。でも、今この瞬間も君を手に入れたくて必死なんだ」

 握られた手に、そっと力が込められる。一瞬の静寂のあと迅は再び口を開いた。

「君を愛している。俺と結婚してほしい」

 あまりにも真っ直ぐで、飾り気のない言葉だった。

「迅さ……」

 名前を呼びかけた途端、胸の奥に込み上げた感情で喉が震えた。

(迅さんが私を……)