結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「パーティのあと、明らかに様子がおかしくなっただろう。いきなりあんな場所に連れて行ったのは作戦ミス……いや、配慮が足りなかった」

 低く声を落とされ、透子は目を瞬かせた。

「いえ、そうではなくてですね、ええと、その……迅さんは、亜里沙さんのことが好きなんですか?」

「俺が、亜里沙を?」

 思い切って切り出すと、今度は迅が驚いた顔をした。透子はパーティーで亜里沙と交わした会話を説明していく。

 透子の説明を聞き終えると、迅は大きくため息をついた。

「亜里沙の話は半分本当で、半分嘘だ。たしかに母親同士が盛り上がって、そんな話が出たことはあった。でも、俺にその気はなかった。もちろん待ってるなんて言ってない。そもそも、当時の俺には結婚する気自体まったくなかったんだ。ありえないだろ」

 迅は呆れたように顔を顰めている。

「……そう、だったんですね」

「幼馴染ではあるが、俺は亜里沙に恋愛感情を持ったことなんて一度もない。まったく、なんでそんな嘘を透子に吹き込んだんだ」

(そっか……迅さんは、亜里沙さんが好きなわけじゃなかったんだ)