結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 さらりと言ってのけながら、迅は透子の腰をぐっと引き寄せる。上半身が密着し、心臓が大きく跳ねた。

「じ、迅さん……っ」

 俯いて熱くなった頬を隠すのが精いっぱいの透子を見て、同僚たちが「透子さん、すごくかわいいわね」、「恋する乙女じゃない」と楽しそうに盛り上がっている。

 そして、視界の端では、鈴谷が苦笑しているのが見えた。

「ふふ、勘がバッチリ当たったわね。初めてふたりを見たときから、うまくいくんじゃないかと思ってたのよ」

 寄り添うふたりを見て、母は満足そうにうなずいた。



 すぐに帰り支度をした透子は、迅の車で自宅マンションに向かった。

「まさか、石井さんのことをあんなに把握していたなんて思いませんでした」

 いろいろ聞きたいことはあったが、透子はとりあえず気になったことを助手席から尋ねた。

「横浜で会ったときに君に暴言を吐いただろう。丸丹で働いてるって言ってたから、念のため素性は洗っておいた」

「そうだったんですね」

 あの短いやりとりだけで、迅がそこまでしていたのが意外だった。

「まさか、あんな馬鹿な真似をするとは思っていなかったがな」