結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「もう二度と、関わるな。もし少しでも近づいたら――わかってるな」

 社会的にだけでなく、物理的に葬られそうなされそうな鋭い瞳で射貫かれ、石井は言葉もなく人形のようにかくかくと首を縦に振る。

「それと、彼女に謝れ」

「ご、ごめんなさい。もう、本当に近づきませんから!」

「え、あの……」

 透子の返事聞かないまま、石井はガバリと頭を下げると、逃げるように背を向ける。足をもつれさせながら、転がるようにエレベーターへと走り去っていった。

「大丈夫だったか」

 迅は、息ついて透子の顔を覗き込む。その表情に先ほどまでの冷たさは一切感じられない。心から心配しているのが伝わっていて、透子の張り詰めていた気持ちが一気に緩んだ。

「……はい。迅さんのおかげで」

「よかった」

 肩の力を抜いて見上げると、迅は安心したように目元を緩めた。

「――真壁様、ありがとうございます。助かりました」

 迅と見つめ合っていた透子は母の声にハッと我に返る。いつのまにかオフィスから同僚たちが何人か出てきていて、みな驚いた顔でこちらを見つめている。その中には鈴谷もいた。