結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「虚偽の内容を故意に拡散されるのであれば、こちらも即座に然るべき対応を取ります。うちは、そういった誹謗中傷への対策も万全ですので」

 母がメディアへ頻繁に出演している分、マリアージュ・アクシアはネット上の誹謗中傷や風評被害に強い弁護士と契約している。

「く、くそ……っ、バカにしやがって!」

 少し脅せば怯むと思ったのに、頑として透子が毅然とした態度を崩さないからだろう。石井の顔は怒りで赤くなっていく。

「お前が邪魔しなければ、俺は、うまくやれてたんだよ! 借金だって返せた。今うまくいかないのもお前のせいだ!」

 石井は怒鳴りながら、透子との距離を一気に詰めた。

 険しく歪んだ顔が目前に迫り、反射的に身を引こうとした途端、右肩を乱暴に掴まれる。

「痛っ……」

 指が食い込むほどの強い力だった。そのまま勢いよく突き飛ばされ、ヒールが床を滑った。

 身体が大きく後ろへ傾き、視界がぐらりと揺れて天井を映す。

「あっ……」

(倒れる……!)

 受け身も取れないまま咄嗟に目を閉じ、痛みを覚悟した――そのときだった。

「透子!」