結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 真摯な気持ちを向けてくれた鈴谷に、ごまかさずに正直な気持ちを伝える。

 迅にふさわしくないのも、釣り合っていないのも知っている。でも、やはり彼のそばにいたいという願いは捨てきれないのだから、恋心とは厄介だ。

「ごめんなさい」

 透子は申し訳なさに胸を痛めながら、頭を下げた。

「うん、はっきり言ってくれてありがとう。まあ、玉砕覚悟だったからね」

 鈴谷はふっと力が抜けたような顔をして、肩をすくめた。

「気持ちを伝えられて、すっきりしたよ。背中を押してくれた所長に感謝しないとね」

「鈴谷さん……」

 透子が言葉を詰まらせると、鈴谷は小さく息を吐いてから、思い出したように笑った。

「カフェで会ったときの彼さ。さっきは強引って言ったけど……正直、僕への牽制もすごかったよ。ちょっと怖いくらいだった。よっぽど、君が大事なんだろうね」

「……大事」

 その言葉に、透子の胸がふいに揺れる。

「幸せにね」

 切なげな笑みで透子を見つめたあと、鈴谷は静かに席を立った。


 鈴谷が帰ったあと、透子は所長室のドアをノックし、中に入る。