結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「これも、もう着ける機会はないと思うので……お返ししますね」

 薬指にはまった婚約指輪に触れ、外そうと指先に力を込めた、そのときだった。

「……外堀を埋めようと思ったが、逆効果だったか」

 あまりにも近くに彼の低い声が聞こえて、透子は顔を上げた。次の瞬間、手首を掴まれる。

「迅さん?」

 逃がさないというように、彼の指が強く透子の手を包み込む。真っ直ぐ射抜くような視線に、透子は息をのんだ。

「どうすれば、透子は俺と一緒にいてくれる?」

 その声音には焦りのようなものまで滲んでいて、透子の胸は激しく揺れる。

(私だって一緒にいたい。でも迅さんは私を婚約者としてそばに置きたいだけ)

――一度、亜里沙さんと、きちんと話してください。

 そう言おうとした刹那。ぐい、と腕を引かれる。

「……あっ」

 気づけば、透子は迅の胸の中に閉じ込められていて、逃げ場を塞ぐように腰へ腕が回されていた。

 彼の体温をダイレクトに感じ、鼓動が跳ねる。見上げた先の瞳は、いつになく切迫した熱を帯びていた。

「俺から離れるのは許さない」

 苦しげに呟いた直後、迅の手が頬に触れる。次の瞬間、視界が彼の影に覆われた。