結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 迅が亜里沙を抱き寄せ、並んで笑い合っている姿を想像しただけで、胸の奥にどす黒いものがじわりと広がる。そんな独占欲にも似た思いを抱いてしまった自分に、透子は戸惑う。

 こんな醜い気持ち、知りたくなかった。まして、迅には絶対に知られたくない。

 透子はそっと薄目を開け、運転席の方を見る。

 流れる街の灯りが深い陰影を落とす横顔は、相変わらず整っている。

 それを見た瞬間、切なさが込み上げ、なぜだか泣きそうになった。


「透子、どうしたんだ。さっきから口数が少ない」

 ぎこちない透子の態度に気づいた迅は、マンションへ戻り、リビングに入った途端、心配そうにこちらへ歩み寄ってきた。
「熱でもあるのか?」

 言うなり、長い腕が伸びてくる。

「あ……」

 透子は反射的に一歩身を引いた。まるで彼の手を避けるような動きになってしまう。

「透子?」

(……ああ、なんか、だめかも)

 怪訝そうに眉を寄せる迅見つめながら、透子はこの場から逃げだしたい衝動に駆られた。

 彼への恋心を自覚してしまった今、感情がぐちゃぐちゃだ。少しでも触れられたら平静でいられる自信がない。