結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「おじさまが亡くなられて、おばさまを安心させるために、とりあえずしがらみのなさそうな人間を選んだだけでしょ。私が手に入るなら迅も考え直すわ。――ねぇ、ちょっと考えてみて?」

 諭すような口調で、亜里沙は続ける。

「化粧品会社の若き経営者の妻になるなら、大手企業の社長令嬢で、CMにも出ているモデルの私と、ただの一般人のあなた。どっちがふさわしいと思う?」

 自分こそが迅の隣に立つべき人間だと、疑っていない顔だった。

「今からでもいいわ。代わってもらえない?」

 亜里沙はゆったりと笑みを深めて、透子の耳元で囁いた。



 パーティが終わり、透子は迅の運転する車の助手席に座っていた。

 窓の外では、夜景が静かに流れていく。

「疲れただろう。着いたら起こすから、少し寝たらいい」

「ありがとうございます」

 迅の気遣うような声に透子は小さく笑みを返し、そのまま素直に目を閉じる。その方が彼と話をしないで済むと思ったからだ。

 亜里沙はあのあとすぐに立ち去り、それ以降、透子へ近づいてくることはなかった。けれど、透子の頭の中では彼女とのやりとりは、何度も繰り返されていた。