結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 気のせいだろうか。詩乃はにこやかに笑っているのに、最後の一言だけ妙な迫力があって、透子は思わず目を瞬かせた。まるで本気で囲い込もうとしているような圧を感じる。

「だいじょうぶです。離すつもりはないので」

 すかさず返した迅の声音も、冗談では済ませないような重い響きがあった。しかも、グッと腰を引き寄せたものだから、透子の鼓動は跳ねる。

 すると詩乃は満足そうに目を細め、「ふふ、安心したわ」と上機嫌に微笑んだ。

 どうやら彼女は、本気で透子を迅のパートナーとして歓迎しているらしい。

(こんなに喜んでいただいてるのに、私、お母様を騙してるんだ)

 罪悪感で、胃がきゅっと縮こまる。

「もう、一緒に暮らしているって聞いて安心したわ。それで、結婚式はいつにするの?」

「まだ具体的には。今は僕の仕事が忙しいですし、ふたりの生活が安定したらと考えています」

 あらかじめ想定していた質問なのだろう。迅は落ち着いた口調で淀みなく答える。

 しかし、詩乃は納得できないというように軽く眉を寄せた。