結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 少なくとも、ここまで大げさな形にしなくても済んだはずだ。

 透子はそっと左手へ視線を落とす。薬指には、光を受けて繊細に輝く存在があった。

 いくら縁談除けとはいえ、婚約指輪まで用意して婚約者として振る舞わせるのは、さすがにやりすぎではないかと思う。

 けれど迅は、それをまるで当然のことのように進めてしまうから、透子は調子を狂わされっぱなしだった。

 そして何より厄介なのは、そうやって振り回されながらも、彼の力になりたいと思ってしまうことだった。

 すると迅がこちらを覗きこんできた。

「大丈夫だ。今日透子より綺麗な女性はいないぞ」

「ありがとうございます。ヘアメイクの方の技術と、ルネリアのおかげですね」

 迅の励ましに、透子は笑みで返す。

 今日身にまとっているのは深いネイビーのドレス。派手さこそないものの、光の加減でわずかに表情を変える上質な生地だ。肩から袖にかけては透け感のあるシフォンが使われており、控えめながらも女性らしさを引き立てたデザインだった。

 指輪を目立たせるように、あえてネックレスはしていない。