結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 透子は戸惑いながら、視線を落とした。

 いつかは揃えてみたいと憧れてはいたが、彼にねだったことなど一度もない。こんな高価なものを、当たり前のようにもらっていいのだろうか。

「君はMSBの経営者の婚約者だろう。最高級のものを使ってもらわなきゃ困る」

 ごく当然のことのように言い切られ、浮つきかけていた気持ちが、すっと現実へ引き戻された。

(そうだよね、これはMSB社長の婚約者として相応しくあるために準備してくれただけ)

 形だけの婚約指輪と同じで、これも彼にとっては必要経費なのだ。

 ちゃんと理解していたはずなのに、胸の奥がちくりと痛む。

「……ありがとうございます。ありがたく使わせていただきますね」

 透子は自分の気持ちに戸惑いながらも、それを悟られないように笑顔を作り、丁寧に頭を下げた。

「でも、これだけいろいろあって、使いこなせるでしょうか。パーティの前に練習しておいた方がいいですね」

 透子が不安になっていると、迅はさらりと答えた。

「なら、パーティ当日はヘアメイクの予定を押さえる。うちのCMで使った彼がいいな。センスがよかった」