結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 完璧に整えられたモデルルームのようでいて、そこには確かに迅の生活の気配があった。

 これから自分も彼と一緒に、この空間で暮らしていくのだと思うと、妙に胸が高鳴ったのを覚えている。

 けれど、実際に始まってみると、迅との生活は拍子抜けするほど楽だった。

 迅からは最初に、『我慢されたり、気を遣われると俺が疲れる』と言われた。お互いできるだけ自然体でいようというスタンスだった。
 透子は正直、企業の御曹司として育った迅は、身の回りのことを誰かにしてもらうのが当たり前の人なのだと思いこんでいた。

 しかし、その予想はいい意味で裏切られる。

 週に一度ハウスキーパーが入っているとはいえ、基本的な家事はひと通りできるし、簡単な食事なら作れたのだ。

 透子が驚いていると、迅は『自分の面倒くらい、自分で見るのは当たり前だ』と苦笑していた。家事はできる方がやっているが、なにも強いられることもない上、手を貸してくれるので透子はなんのストレスも感じていない。

 まだ一週間しか経っていないが、同じ空間で過ごしていても、不思議なくらい気疲れしなかった。