結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 そこまで早く同居を始められたのは、透子が住んでいたマンションを引き払わず、当面必要な荷物だけを持ち込んだからだ。
 迅はやけに不満そうだったが、考えてもみてほしい。この役割を終えたら透子は自宅に戻るのだ。そのときに帰る家がないのは非常に困る。

 透子に与えられたのは、誰も使ったことのないゲストルームだった。

 ひとりで使うには十分すぎるほど広く、ウォークインクローゼットまで備わっていて、収納も使い切れないほどあった。

 初めてこの家を訪れたとき、透子はまず、その洗練された空間に圧倒された。

 都心の一等地に建つマンション。無駄を削ぎ落としたモダンな外観も、落ち着いた色味で統一された室内も、まるで高級ホテルのスイートルームのようだった。

 広いリビングには、上質な家具がゆったりと配置されている。間接照明の柔らかな灯りが空間を静かに照らし、ホテルラウンジのような落ち着いた空気を作り出していた。

 その一方で、ローテーブルには読みかけらしい海外のビジネス誌が置かれ、ソファの背にはジャケットが無造作に掛けられている。キッチンカウンターには、使い込まれたコーヒーメーカーもあった。