結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 エントランスが大通りに面しているので、店の前は何度も通りすぎてきたが、世界のセレブ御用達のショップに自分が客として立ち入る日がこようとは思わなかった。

 しかも迅は事前に手配を済ませていたらしく、スタッフに恭しく案内された先は落ち着いた雰囲気の個室だった。

 ソファへ腰を下ろした途端、目の前のテーブルへ次々とジュエリーケースが並べられていく。

 そのどれもが芸術品のような存在感で煌めいていて、透子はますます、自分がここにいていいのか不安になった。

『着けるのは透子だ。好きなものを選べ』

 一方の迅は落ち着き払っていた。それでも透子が躊躇していると、『俺の妻になる女性に、中途半端なものは贈れない』と圧を掛けられる。

(そ、そうだよね。これは私のための指輪じゃなくて、迅さんの〝婚約者〟として必要なアイテムなんだ)

 これはMSBの社長の箔をつけるためのものにすぎない。役目が終われば返すことになるはずだ。遠慮するほうが、かえって図々しい気がした。

 なんとか割り切ることに成功した透子は、店員のアドバイスを聞きながらひとつの指輪を選んだ。