結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 やがて、そんな駆け引きそのものが煩わしくなり、家業に入ってからは結婚をするつもりもないのに、女性に時間を割くこと自体、無意味だと思うようになった。

 だからだろうか。恋人でもない交際相手、という不思議な存在が迅には新鮮だった。

 迅は、透子から共有された婚活の流れについての簡単な資料をさっと目を通す。そこには仮交際中は、なるべくデートを繰り返してお互いの価値観を擦り合わせると書いてあった。

 こちらの都合に引き込んでしまった自覚はある。約束したように一通りの婚活のプロセスは踏むべきだろう。

 思い立った迅はすぐに透子にメッセージを送り、初回デートを設定する。

 彼女は日中の気軽な飲食をイメージしていたようだが、高級ホテルのディナーをサプライズで招待した。ここを選んでおけば、女性は文句を言わないと知っていたからだ。

(まさか、高級すぎると文句を言われるとは思わなったな。彼女が今まで付き合ってきた男は、こういった店に連れてきてやっていなかったのか)

 必死に緊張を悟られまいとする彼女を前に、いつもより食事が美味しく感じた。