結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

『結婚はゴールではないんです。そのあと続く長い結婚生活にこそ意識を向けるべきです』

 職業柄なのか、あるいは彼女の恋愛経験によるものなのかはわからない。しかし、そんな割り切った価値観は迅にとって好都合だった。

(これは、ありだな)

『婚活相手は君にする』

 そう告げたときの透子のぽかんとした顔は、今思い出してもかわいらしい。取り繕った表情が剥がれ、素の反応がそのまま出ていた。

 迅は自分の状況を説明し、母の目を欺くために、透子と交際し成婚退会したいと伝えた。

(母さんのへそをこれ以上曲げさせるのも面倒だし、時間稼ぎもできる)

 あくまでビジネスを前提とした交際であれば、透子が迅と結婚できるなどと勘違いはしないははずだ。

 真面目に婚活をしたふりをしつつ、確実に結婚を避けられる。悪くないアイディアだ。

 当然、透子は難色を示した。カウンセラーと客が付き合うのはコンプライアンス的にあってはならないからだ。

 頑なに固辞する透子を前に、迅はどうしても口説き落としたくなっていく。