結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

 彼らを見送る透子に近寄り声を掛けると、彼女は途端に笑顔を引っ込め、『大変失礼いたしました』と完全なビジネスモードに切り替えた。それが少し惜しい気がした。

 カウンセリングルームに案内され、約束通り透子からのプレゼンを聞く。資料も説明もわかりやすく、質問にも的確な答えが返ってきた。秘書に引き抜きたいくらい優秀な女性だった。

 しかし、どんなに結婚相談所での婚活のメリットを理解しても、迅自身に結婚の意思がないのだから結果は変わらない。

 期待に満ちた目を向けられて、少々罪悪感を覚えた――そのとき迅の中である考えが浮かんだ。

『持田透子さん、だったか。〝婚活界の魔女〟と呼ばれているここの所長の娘で間違いない?』

 彼女の母持田紀代子は有名なインフルエンサーだと、母から聞かされていた。

『え? ええ。そうですが……』

 戸惑う透子にさらに結婚や恋人の有無、さらに結婚への価値観を尋ねた。まるでこちらがカウンセラーになったかのように。
 すると、透子の口から飛び出したのは結婚は等価交換であり、必ずしも恋愛感情は必要ないというひどくロジカルで現実的な考え方だった。