結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました

「じ、じ……ちが、真壁様……」

 突然現れた迅にあまりにも驚き、弱ったセミのような声が漏れる。

「透子、行くぞ」

「え、あの……」

「君と待ち合わせしていたのは俺だろう?」

「でも、遅れるって……」

 有無を言わせない声音に圧倒されて、透子ははっきり言い返せない。

「あの、あなたは——」

 目を丸くしていた鈴谷が、我に返ったように声を上げた。

「透子の交際相手です。すみませんが、連れていきます」

 短く言い切ると、迅は透子の手首を取った。さほど力は入っていないのに、その指先には、拒む隙を与えない強さがあった。

「ちょっ……」

 促されるまま立ち上がりながらも、透子は慌てて振り返った。

「あの、鈴谷さん、ごめんなさい。失礼します」

「あ、ああ……」

 戸惑いを隠せない鈴谷に、軽く頭を下げる。視線の端で、彼が何か言いかけて口を閉じるのが見えた。

 その間にも、迅は一度も足を止めない。透子の手首を引いたまま、当然のように出口へ向かって歩き出す。

 半ば引きずられるようにして店を出て、そのまま近くのパーキングへ連れていかれた。停めてあった彼の車の助手席に押し込まれるようにして乗せられる。