キミが家族になった、その日から。



「学校と家で全然違うよね。」

黒色の髪が少し濡れて目にかかる。その髪を指でひょいと退かして、涼は少しだけ空を見上げる。


「…そうか?」

「うん…」

ちょっと寂しい、なんて言えなかった。


「学校だと誰にも近づかないし」


「家だと……」


あれも似合わない、これも似合わない、次の言葉に似合う言葉を探していると、涼が小さく笑った。


「家だと?」

私の耳に、涼の低くて優しい声が届く。それにすらドキッと心臓を揺らしてしまう…


「……少しだけ優しい」


 ──その瞬間だった


涼はふっと吹き出した。


「ふっ……」

「え?」

──初めて見た、涼が声を出して笑うところを。そんな…優しい顔で笑うんだ。

目尻を少しだけ下げて笑うその表情は、学校で見せるクールな顔とはまるで別人だった。


その笑顔に、夏音は思わず見とれてしまう。

ーー激しい雨音が二人を包む。


誰も話さない。それでも、沈黙は少しも苦しくなかった。

でも、この2人だけの空間が、ずっと続きますようにって、この酷い夕立に願いを込めた。



 ――そのとき、夏音はまだ知らなかった。



 この笑顔が、何度も自分の心を揺らすことになるなんて。