「──俺のこと、絶対好きになるな。」
───ある夏。
親の再婚で、私は突然、同じクラスの人気者・柴崎涼と兄妹になった。学校では女子から「かっこいい」と騒がれるクールな男子。
──まさか、その人と同じ家で暮らすなんて思ってもいなかった。
しかも、新しい家で最初に言われた言葉が、それだった。
「……は?」
思わず聞き返した私に、涼は表情ひとつ変えずに言う。
「面倒だから。」
その言い方があまりにも腹立たしくて、私は心の中で決めた。
──誰が好きになるもんか。
そう思っていた……あの日までは。
毎日「おはよう」と言い合うことも。
同じ食卓を囲むことも。
落ち込んだ私の隣で、何も言わずに寄り添ってくれることも。
“家族”という距離が、こんなにも苦しくなることも。
──私は何も知らなかった。
これは、ひとつ屋根の下で始まった、一番近くて、一番遠い初恋。
そして――“好きになるな”と言った君が、誰よりも先に恋をしてしまうまでの物語──



