イケメンでモテるけどすぐ振られる男子と、地味目だけどモテてすぐ振る女子のお話

「······なんで私が貴重なお休みを無駄にして東魁君に付き合わないといけないのかな?」

 胸から胃までの間に言いしれぬ不快感を感じた戸室坂まひるは、東魁優仁の踏み込んで来る距離感に壁を作る必要性を感じ、容赦ない言葉を浴びせる選択を下した。

「なんつーかさ。俺に付きまとわれて戸室坂もいい迷惑だろ? でも俺ってお節介な性分でさ。頼むよ 。1度だけ。土曜日に1時間だけ俺に付き合ってよ。そしたら2度と戸室坂に近づかないからさ」

 まひるは両手を合わせて懇願する優仁を冷たい両目で眺めながら思考する。ここで毒舌を吐き散らかし優仁を黙らせるのは容易だった。

 だが、優仁に対して立て続けに不快感を感じていたまひるは、それだけでは満足出来なかった。一計 を案じたまひるは、内心で冷笑しながら優仁の誘いに乗る事にした。


 土曜日。駅の近くの本屋でまひると優仁は待ち合わせた。後の面倒を考え、まひるは優仁とライン交換などせずに、場所と時間を口約束だけで決めた。

 まひるの顔は、麻痺棚俊に語った化粧レベル4のほぼフルメイクに近い状態だった。 この可愛らしいビジュアルでまひるは優仁をその気にさせて弄ぶつもりだった。

  当日の間だけはしおらしく振る舞い、帰り際に天国から地獄へたたき落とすつもりだった。

 まひるは優仁に対して感じていたモヤモヤの正体を看破していた。それは、格下の2軍男子が1軍女子の自分に対して礼節をわきまえなかった点だった。

 空気も読まず、他校のイケメン男子にモテるまひるの戦歴に敬意を見せない不埒な2軍男子に、まひるは鉄槌を下すつもりだった。

 白のワンピース姿のまひると対面した時、優仁の表情は曇っていた。

「······戸室坂。またそんな濃い化粧をして」

 レベル4のメイクを施したまひるを見たこれまでの男子は、例外無く両目を見開きまひるの美貌に注目してきた。 当然優仁も同じ反応を見せるかと思いきや、まひるの先制攻撃は空を切った形となった。

 優仁はまひるのファッションにも興味を持つ気配も見せず、本屋を出てまひるをある場所へ案内して行く。 本屋がある大通りから中に入って歩く事15分。優仁は「東魁皮膚科」と看板が出ている建物に入った。

 医院と住居が1階2階で分かれており、待合室室には誰も居なかった。

「と、東魁君? ここって?」

「ああ。ここは俺の家だよ。おーい。父さーん」

 考えもしなかった目的地に、まひるは激しく動揺していた。すると、診察室から白衣を来た50代の男性が出て来た。

「······まったく。本当に連れてきたのか? 優仁」

 優仁の父親と思われる中年の男は、ため息交じりに息子を睨む。

「まあまあ。将来の後継ぎの息子の研修だと思ってさ。昼休憩の間にささっと診てよ」

「何がささっとだ。診察を何だと思っている」

 親子のやり取りを間近で見ていたまひるは、この場にいる事がいたたまれなくなって来た。

「あ、あの。私帰りますね」

「ああ。済まないお嬢さん。息子に無理やり連れてこられて迷惑でしたね、迷惑ついでに馬鹿息子のお節介に付き合ってもらえるかな?」

  優仁の父親は頭を掻きながらまひるに謝罪し、控えめにまひるを診察室に誘う。優仁は「早く行こうぜ」とまひるの肩を叩き、予定に無い奇妙な診察が始まった。