イケメンでモテるけどすぐ振られる男子と、地味目だけどモテてすぐ振る女子のお話

 東京の郊外にある何処にでもある県立高校。4クラスある2年生達の中では、ある噂が飛び交っていた。

「ねえ聞いた? 麻痺棚(まひたな)君、また彼女と別れたらしいよ」

「またあ? 今度は半月も持たなかったんじゃない?」

「いいよなあ。顔がいいだけで女子から寄ってくるんだから」

「でも性格がなあ。あれじゃあ、確かに長続きしないよな」

 およそ噂話や陰口は本人不在の場所で密々と、そして面白可笑しく行われている。そしてひとしきり悪口を並べ散らかした後、悪意を吐いた人間は何事も無かった様にその本人と和やかに会話を交わす。

「おはよう。麻痺棚。今朝も腹立つくらいイケメン顔だな?」

  麻痺棚俊(まひたなしゅん)は自分の教室に入るなり、野球部所属で坊主頭のクラスメイトに僻みっぽい挨拶をされる。

  俊は肯定するでも無く、否定するでも無く緩慢な動きで頷く。そして教室の1番後ろの自分の席に面倒くさそうに座る。

  身長182センチ。細身で身長の半分を足が占めていた。長めの前髪を中分にしており、顔は韓国アイドルグループのセンターポジションに居そうな造りをしており、初見の相手からは今にもハングル語を喋り出しそうと度々言われていた。

  麻痺棚俊は幼少の頃から異性にモテまくって来た 。その数と同数の相手に振られて来た。この韓国系美男子は1度の例外無く相手から別れを告げられ続けてきた。

  理由は簡単だった。俊は一貫して恋人にさして興味を持たず無関心だった。そして生来の無気力さが祟り、相手は人形と付き合っているのかと憤慨し、俊から去って行った。

 俊は新しい恋人が出来ても、その相手に振られても。大した感情の揺れは生じなかった。そんな俊が珍しく同じクラス内で興味を持った女子がいた。

  名前は戸室坂(こむろさか)まひる。小柄ながらスタイルは良く、肩より少し長い髪の毛は艷やかで綺麗だった。 顔には際立った特徴は見られず、どちらかと言うと地味目と言って良かった。

  決して目立つような存在では無かったが、クラスメイト達との関係は良好に見えた。 そしてまひるには常に恋話が絶えなかった。

  俊程の数では無いが、まひるは季節ごとに恋人が変わるという噂を俊は耳にした事があった。俊とまひるは同じ図書委員であり、図書室のカウンターで席を並べて本の貸し出し業務を担当していた。

「麻痺棚君ってイケメンの無駄遣いをしてるよね」

  放課後、俊が図書室のカウンターでまひるに言われたその一言。それがきっかけとなり、俊とまひるとの奇妙な交流関係が始まった。