目を閉じるのが正解なのだと昔読んだ少女漫画に書いてあった。だから閉じた。途端に呼吸の仕方を忘れた。待って。息ができない。くっついていた唇を離そうと顔を後ろに倒せば「もう終わり?」と向葵さんが囁く。
「酸素、足りなくて、死にそうで、」
「俺は翠ちゃんからのキスが足りないんだけど」
「……私も、したいです」
「もうちょい頑張れそう?それともギブする?」
「う、ううん、する」
ギブは嫌だ。次はもっと頑張る。
「あー、待って」
けれど先にギブしそうなのは向葵さんらしい。
なぜか耳が真っ赤だ。
「向葵さん?」
「ふたりきりになりたい」
「ふたりきり!?」
「うん。誰にも邪魔されないように翠ちゃんを堪能したい。いい?」
「も、もちろん!」
「よし。じゃあ俺んちに帰ります」
「はい!えっ?!」
家には何度かお邪魔したことあるけど、いつも映画を観たり、一緒にお昼ご飯を作ったりしてるだからキス目的で行くのは初めてで。
