「大事なものだから、アイツに付き合ってもらって、お前に一番似合うやつを選んでたんだ。……まさか、そんな最悪な誤解をされてるなんて思いもしなかった」
慧さんは呆然とする私の左手を、そっと両手で包み込んだ。
「昔、お前が俺にくれただろ。お祭りでとった、”おもちゃの指輪”」
向けられた慧さんの瞳が、いたずらがっぽく、けれどどうしようもないほど愛おしそうに細められる。
「……やっと、本物を渡せた、あの頃からずっと、俺の奥さんにするのはお前だけだって決めてたんだ。……義務なんかじゃない。俺が、雛乃、お前を愛してるからだ。……これで、信じてくれるか?」
「──っ」
嘘みたいに優しい、甘い声。
そして何より、ずっと冷たく距離を置かれていた『森下』ではなく、大好きなあの頃のままの私の名前を、彼は今、確かに呼んでくれた。
(雛乃、って……呼んでくれた……っ)
胸の奥からじわじわと、張り裂けそうなほどの愛しさと喜びが溢れ出して、涙がまた視界を滲ませていく。



